君の隣の

その人は 何もなくなった
何もかも 奪われてしまった
うずくまって ずっと泣いている
悲しんでいる
「全てが 消えた」とつぶやいて

 

何も失っていない 僕は
その人に 何もいえない
どう思えばいいのか わからない

何も失っていないから 僕は
悲しみも 苦しみも
共感できないんだ

 

だから 僕はその人の 隣に座った
黙って ずっと

ちらっと その人を見る
まだ 泣いていた
地面には大粒の涙が 弧を描いていた

名前も知らない その人に
問いたい言葉を 僕はできないでいた

ねぇ、本当に 何もなくなったの?
全部 ゼロになったの?

隣にいる 僕は
君の『なにか』になれないの?

その人に 言いたい言葉を
僕は言えないでいる

 

 

『君自身が 「なくなって」いないんだよ』

 

 

 って

伝えたいけど 伝えない
僕がいう 言葉は
「無力」だから

 

だけど 僕は 隣にいる
その人が 泣きやんで
僕を見るまで
ずっと 側にいるんだ

 

これだけは 知ってほしくて……

『君は 孤独(ひとり)じゃない』と

 

 

傷は癒せないけど、埋めてあげれる。
それじゃぁダメかな?
2012/5/13

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