親友はパパになっていた


 確認だ。
 俺は、私立に通う高校二年の瀬名 浅葱(せな あさぎ)。今日はというと、学校帰りに久々に自由奔放な幼なじみの不良、生成 千歳(きいな ちとせ)に招かれ、彼の家に遊びにきた。
 奴は、学校に真面目に来ないどころか、他校の生徒に喧嘩を売る、果ては気に入らない教師も殴る、もっとひどい時には警察にもお世話になる惨事を起こした事があるという、我が校きっての問題児といってもいいだろう。
 しかしそんな問題など、紙くずのように吹き飛ばしてしまう程に、恐ろしいくらいこいつは頭がいい。
 まともに授業を受けていないのに、そもそも勉強している所を見たことがないのに、ふらりと全国模試に現れては、トップを独走するほどだ。
 さらには、運動神経もギネス級にすごい。
 この前、ちょっと名の知れた自転車競争でなんと一輪車で出場し、一位に輝いていた。
 俺のおかしいだろ突っ込みは喝采でかき消された。
 皆、騙されてるっ。
 外見は今時不良にしては珍しい黒髪で、派手な金銀のピアスをいくつか耳につけているだけ。知らない人がこいつを見たら、少々のヤンチャ系だと誤認する程度だ。
 ともかく、性格さえ省けば、完璧な逸材といえるだろう。
 本当に、性格さえよかったら……。
 すごい奴は変人だと言われるのは、こいつの所為ではないかと、思う程だ。

 で、俺は昔からの幼なじみということで、先生や同級生に、よくこいつの手綱を任される。
 まぁ、俺は千歳が怖いとは思わないし、嫌いじゃない、むしろ素で話せる数少ない友人だ。
 だから、千歳に変な噂が立つのは腹立つ。学校とかにきちんと行って欲しくて、ガミガミ説教するのだが、聞きもしないし、逆に振り回される。
 こいつはことあるごとに、のらりくらりと俺の小言を器用に躱すから、ま〜むかつくわけだ。
 しかし、今日は自ら俺を家に誘った。
 最近不透明だった奴の生活を暴くチャンスだと俺は目を光らせ、奴の住んでいるアパート……ではなく、マンションに着いた。

 

 そして、玄関で俺は立ち往生するはめになる。
 だって……。
「パパ、おかいり〜」
 ドアを開いた瞬間、目に入ってきたのはどこにでもいる、普通の稚い少女。
 そう、その子が、千歳のことを………………パパ?
「ん、ただいま」
「このしと、だれ〜?」
「俺の親友(タチ)」
 奴は、さらりと答え、周囲を一瞥し、子供を抱き上げる。
「おい、ばか、早く上がれ」
 …………確認だ。
 俺は今、高校二年だ。
 そして、目の前の幼なじみも当然、高校二年。
 で、その腕にはどうみても、四、五歳の少女。
 そして、その子は幼なじみのことをパパと呼ぶ……………………………。
「え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!????」
「うるさい」
 俺の頭が、土星の彼方まで吹っ飛んだ。

 

 
第一章 1pに続く
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