「メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!!!」
パンッ
パンッ
「……一つ聞いていい? リーダー、これ、なに」
下見を終えて、アジトに帰ってきたものの、玄関で趣味の悪い博士が作ったであろう、特製のクラッカーのおかげで、俺の金髪の髪は茶色くなっている。なんかネバネバしたものが絡み付く。
一緒に帰ってきたウルも、俺よりとっても背が高いから、体全体だいだい色。ウルは何が起ったのか分からなくて目をパチパチしている。
「なにって、クリスマスとお正月だよ。ねー、フーア?」
「あー」
リーダーは抱っこしている少女に同意を求める。その少女の手にもクラッカー……。
「フーア、にいっても、分かるわけないだろ! まだ小さいんだぞ!」
僕は眼鏡を拭きながら、リーダーとフーアが持っているまだ鳴らしてないクラッカーをひったくる。
「あー、うー、うー」
「あ〜、ちょと、まだ、フーアはクラッカー鳴らしてないんだよ。取り上げたらかわいそうじゃないか」
泣きそうになるフーアを必死でなだめるリーダーに、僕は爆発寸前。
隣でウルがどうすればいいのか、わからなくて僕とリーダーを交互で見ている。
ウル、こういうときはなだめてくれ。
「おい、リーダー、準備できたぞ。早く来い。ニコ、ウル。お前らは先に着替えて、食堂に来い」
爆発寸前の僕を止めたのは、エプロン姿の副リーダーだった。
「碧(へき)〜、聞いてくれよ、ニコがフーアに怒鳴るんだよ〜」
「どこからどう見ても、リーダー、あなたが悪い。フーアはそのとばっちりを受けたに過ぎない」
フーアの頭をなでながら副リーダー、碧はいう。さすが副リーダー。馬鹿モードに入っているリーダーを止められるのは、この人だけだ。
俺とウルは、副リーダーの言う通り、シャワーで汚れを落として、食堂に向かう。
そこには……。
「コレハ、スゴイデスネ」
片言で、ウルは感嘆をあげる。僕も同感だ。
室内は一部を除いて、きらびやかに装飾されていた。
大きい木にいろいろな飾りがつけられ、部屋全体に手作りの装飾も見られ、でっかいお餅の上に蜜柑も飾ってあって、もっとすごいのは、中心のテーブルに、でっかいホールケーキ、チキンに鍋、四角い黒い箱には、色とりどりの食べ物があった。
「きたか。はい。これかぶって座るんだ」
副リーダーが、なにやら、星マークがついた三角形の帽子をくれる。
意味が分からず、僕らはとりあえず言われた通りそれをかぶって、座る。
副リーダーは、まだ、なにやら持ってくるためにキッチンに行く。
それぞれの席に、リリーと澄(チョウ)はもう座っていた。
「おまえら、その格好は何だ?」
「これか、これはトナカイっていう着ぐるみだってさ。リーダーが教えてくれたぞ。んで、リリーの奴は、着物という着ぐるみだって」
「あぁ、そう」
とりあえず分かったことは、この変な企画はリーダーがたてたものだということ。
よくわからない部分は、本人に聞いた方がいい。
「諸君、そろったな。では、お祝いといこうじゃないか!」
どっかから登場してきたリーダーは、真っ赤の服を着て白い大きな袋を持ってやってきた。ヒゲもつけて。
フーアもヒゲ以外は、同じ格好をしていた。
俺はすかさず突っ込むことにする。
「はい、リーダー。意味が分からないんですが、何を祝うのですか? その格好になんか意味があるんですか」
「よくぞ聞いてくれた! といいたいところだが、先にお祝いしなくては、せっかくの料理も冷めてしまう」
「ほら、全員これを持て」
副リーダーが紙コップを全員に配る。中はお酒に似た匂い。
「さて、全員コップは持ったか! では、メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!!」
「メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!!」
わけ分からないが、とりあえず皆と声を揃えて祝う。
それから、皆でお食事タイム。
ケーキや黒豆、黄色い栗など、初めて食べるものばかりだったけれど、とってもおいしかった。
「下見お疲れ。おいしいか?」
副リーダーが訪ねてくる。僕は尊敬の眼差しで、答える。
「はい! とてもおいしいです。これ全て碧さんが作ったんですか?」
「俺も手伝ったぞ!」
澄も口のものを飛ばしながら、手を挙げる。
「お前はもうちょっと静かに食べろよ」
布巾を僕は澄に渡す。
「俺とリーダーでだいたい作ったけれど、皆もいろいろ手伝ってくれたから、皆で作った料理だね。これは」
「そうなんですか……って、リーダーも!?」
驚いて、副リーダーに聞き返す。こくん、とうなづく。副リーダー。
僕は、リリーとフーア、犬のクロッケオと楽しく談笑しながら食事をしているリーダーをまじまじと見る。
以外だ。普段リーダーが料理をするところを視たことがない。
料理、できたんだ…………。
「そ、それで、このお祝いは何ですか?」
僕は平静になろうと副リーダーに訪ねる。
「あぁ、なんというか。昔、このぐらいの時に、やっていた行事の一環だよ。知らないか?」
そういわれても、旧時代のことは、ほとんど、僕らは学ぶことはなかった。
「う〜ん。わかりません。どういうものですか?」
「それは、私が話そう! 私の衣装はサンタクロース。そして、澄がきているのはトナカイ! おそらく、ニコも知っているぞ」
すっかりハイテンションのリーダー。
「サンタクロース……? 聞いたことあるような……」
何かの文献で見たな、え〜と確か、本当にあった恐い話…………で……。
「あぁ、思い出した。確か、クリスマスはサンタクロースという人物が、よいこの家にはよいこの欲しいプレゼントを運び、悪い子の家には、悪い子の首を刈り取っていく、だから返り血で、サンタクロースは真っ赤な服を着ているんだって。そして、お正月は、羽子板というラケットで、千本の針の一本の木のうえで、気合いを入れるためデスマッチをしたり、カルタという手裏剣で嫌いな相手と闘う、それと、おみくじでは……」
「ちょっと待った! それ何の本で見たの! 全然違うよ。というかこわいから。全部暗い話じゃないか! ほら見てよ。フーアとリリーが怖がってるじゃん!」
見ると二人は真っ青になっていた。時にリリー。このテの話はダメだったな。悪いことしてしまった。
「ご、ごめん。じゃあ、実際はどんな行事なんですか?」
「ふっふっふ。クリスマスはね、子供達に喜びを与える日なのさ! 子供達にここまですくすく育ってくれてありがとう! と感謝と願いをこめて、僕たち大人はサンタという格好をして子供達にプレゼントを渡しながら感謝するのさ! サンタが赤い服をきてプレゼントを渡すのは、赤は愛情の象徴!」
力説するリーダー。
「なるほど。じゃあお正月は?」
僕は納得する。そして、他の皆もふん、ふん、と聞いている。僕は気付かなかったが、副リーダーは頭を抱えていた。
「お正月はね、今まであってきた人達に、出会えてよかった! ありがとう! という感謝をこめて、そしてこれからもずーっとよろしくお願いしますって願いをこめて、羽子板のラケットに向かって、出会った人の名を書いたカルタを投げるんだ。羽子板にささるまで」
「そうだったのか・……」
僕は羽子板とカルタを別々にして覚えていたけれど、一緒に使うものだったんだな。
「というわけで、君たちには、サンタクロースに扮した僕から、プレゼントだよ!!」
オーー
みんな歓声を上げる。
各自、リーダーから大きなプレゼントを渡された。僕も貰ってしまった。
でも、うれしいな。
こうやって皆で一緒ににぎわって、楽しくやるなんて、今の時代考えられないもんな。
その後は、羽子板で、皆とささるまで手裏剣を投げたり、歌を歌ったり、餅つきというものをやった。
「そういえば、どうして二つ同時にやったんですか?」
最大の疑問を僕は副リーダー訪ねる。
「あぁ、それは、作者の都合によるものだ。あんまり気にしないでほしい」
副リーダーは苦笑した。
「な、な、ニコ、こっち向け!」
「なんですか? リーダー」
パンっ
奇天烈クラッカーの音が響く。
僕は、全身、虹色。
鳴らしたのは、フーア。
「……一応確認しますが、どうして僕に向かってやるんですか?」
「フーアがどうしてもクラッカー使いたいって、で、ちょうどその先にニコがいたから、どうせなら正面からの方がいいかなって。な〜」
「あ〜」
鳴らせて嬉しそうなフーア。
プチっ
僕の中の何かが切れた。
「リ〜〜〜ダ〜〜〜!!」
アジトには僕の声がこだまする。
ひとときの平穏。でも、たまにならいいかもな。
リーダーの馬鹿モード以外の話でだけれど。