1/1p
「……ンッ」
誰かが、俺を呼ぶ。
あー、あいつ、また戦ったのか。
また、陰で泣いていたんだろうなぁ。
「インッ、ハインッ、大丈夫ですか!?」
「……お、おう…………あれ?」
目の前にいたのは、シーザーだった。
「ちょ、なに頬をつねるんですか!」
「お前も無事だったんだな」
「は? 何を言っているんですか? 俺はずっと、集合場所で一人待ちぼうけですよ。爆発音がするし、急いで駆けつけてみたら、この有様です。あなたは、その中心で半日も寝ているし……一体これはどういうことですっ」
シーザー指の先には、荒れ野原が。
「離れた場所にいたジルに聞いたら、赤ん坊のようにバブーしか言わないし……」
あいつ。
ジルを殺さなかった?
「わりぃ、後で説明する。だから、この場を任せた」
「……わかりましたから、急いで追いかけなさい」
なんとなく察してくれた親友は俺の背中を押す。
「さんきゅー」
傷は全く痛まない。
あいつが治したのか。
俺は走った。
レフィーナは少し、がっかりしていた。
目の前でカルネと仲良く喋る妹の姿に。
ボサボサの髪、黒服、黒マント。
髪を隠すようにフードを被るイーラの姿に。
(これでよかったのかしら)
昨日、戻ってきたイーラは血まみれで、髪も服も飾りもボロボロだった。
しかし、なぜか、イーラは心が晴れたかのように笑っていた。
『これで、よかったのよ』
そう告げるイーラにレフィーナは何も言わなかった。
「イーラ」
「はい? なあに、お姉様?」
「よかったの?」
これで。
襲ってきたジルの記憶には私達、三女神をあわよくば手中に入れることが、任務内容に入っていた。
ハイレンがイーラと仲がいいと色んな国が知ってしまっているようだ。
それを消すために、これからこの国を離れるのだ。
それがイーラの答えだったのだ。
「あの人が死ぬ姿なんてもうみたくないもの」
暫く、逢わないほうがいいわ。
笑う妹の作り笑いに、レフィーナはため息をつく。
「じゃあ、このまま少し待ちましょう」
「え?」
「後、十秒……三、二、一……」
「レイナお姉様?」
「つ、捕まえた」
「え?」
「あ、馬鹿男」
「すみません、お姉様方、暫く、イーラをお借りします!」
「え、ちょ、ちょっと!」
イーラを担ぎ、レフィーナたちの許可を聞く前にすでに走り去るハイレン。
「どうぞ」
「え、なに、なに、これってもしかして……『イーラお姉様、乙女☆作戦お薬、これで異性もイチコロ!』が成功……!!」
カルネとレフィーナは顔を見合わせて笑った。
「ちょっと、一体どこまでいくつもりっ」
「そういえば、前もあったな。こんなこと」
「いきなり、な、に……」
今の状況がどんな状況なのか、ようやくイーラは気付く。
あの時は子供の姿だった。
ふと、周りを見る。
飛んでいるかのように周囲の風景が輝いていた。
「わたし……」
「ん?」
「わたし、あなたの側にいたいの」
自然と言葉にしていた。
「ははっ。奇遇だな。俺もお前の側にいたい」
ふわりと地面に降り立つハイレン。
頬を赤らめながら見下ろすイーラに軽く、唇をあわす。
問題は山積み。
だけど、まずは二人でお互いのことを語り合おうか――。
了
☆この小説を書くのにあたって、参考文献など☆
ねつ【熱】 by広辞苑
何かの出会いのきっかけになったら幸いです!
ここまで読んで下さい本当にありがとうございました!!
2011/11/3 彩真 創
オンライン文化祭2012-熱-参加作品