戦の魔女 ーシュラハト・ヘクセー
08.朽ちた鳥は翼を得て羽ばたく

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「……ンッ」
 誰かが、俺を呼ぶ。
 あー、あいつ、また戦ったのか。
 また、陰で泣いていたんだろうなぁ。
「インッ、ハインッ、大丈夫ですか!?」
「……お、おう…………あれ?」
 目の前にいたのは、シーザーだった。
「ちょ、なに頬をつねるんですか!」
「お前も無事だったんだな」
「は? 何を言っているんですか? 俺はずっと、集合場所で一人待ちぼうけですよ。爆発音がするし、急いで駆けつけてみたら、この有様です。あなたは、その中心で半日も寝ているし……一体これはどういうことですっ」
 シーザー指の先には、荒れ野原が。
「離れた場所にいたジルに聞いたら、赤ん坊のようにバブーしか言わないし……」
 あいつ。
 ジルを殺さなかった?
「わりぃ、後で説明する。だから、この場を任せた」
「……わかりましたから、急いで追いかけなさい」
 なんとなく察してくれた親友は俺の背中を押す。
「さんきゅー」
 傷は全く痛まない。
 あいつが治したのか。
 俺は走った。

 

間

 

 レフィーナは少し、がっかりしていた。
 目の前でカルネと仲良く喋る妹の姿に。
 ボサボサの髪、黒服、黒マント。
 髪を隠すようにフードを被るイーラの姿に。
(これでよかったのかしら)
 昨日、戻ってきたイーラは血まみれで、髪も服も飾りもボロボロだった。
 しかし、なぜか、イーラは心が晴れたかのように笑っていた。
『これで、よかったのよ』
 そう告げるイーラにレフィーナは何も言わなかった。
「イーラ」
「はい? なあに、お姉様?」
「よかったの?」
 これで。
 襲ってきたジルの記憶には私達、三女神をあわよくば手中に入れることが、任務内容に入っていた。
 ハイレンがイーラと仲がいいと色んな国が知ってしまっているようだ。
 それを消すために、これからこの国を離れるのだ。
 それがイーラの答えだったのだ。

「あの人が死ぬ姿なんてもうみたくないもの」
 暫く、逢わないほうがいいわ。
 笑う妹の作り笑いに、レフィーナはため息をつく。
「じゃあ、このまま少し待ちましょう」
「え?」
「後、十秒……三、二、一……」
「レイナお姉様?」

「つ、捕まえた」
「え?」
「あ、馬鹿男」
「すみません、お姉様方、暫く、イーラをお借りします!」
「え、ちょ、ちょっと!」
 イーラを担ぎ、レフィーナたちの許可を聞く前にすでに走り去るハイレン。
「どうぞ」
「え、なに、なに、これってもしかして……『イーラお姉様、乙女☆作戦お薬、これで異性もイチコロ!』が成功……!!」
 カルネとレフィーナは顔を見合わせて笑った。

 

間

 

「ちょっと、一体どこまでいくつもりっ」
「そういえば、前もあったな。こんなこと」
「いきなり、な、に……」
 今の状況がどんな状況なのか、ようやくイーラは気付く。
 あの時は子供の姿だった。
 ふと、周りを見る。
 飛んでいるかのように周囲の風景が輝いていた。
「わたし……」
「ん?」
「わたし、あなたの側にいたいの」
 自然と言葉にしていた。
「ははっ。奇遇だな。俺もお前の側にいたい」
 ふわりと地面に降り立つハイレン。
 頬を赤らめながら見下ろすイーラに軽く、唇をあわす。
 問題は山積み。
 だけど、まずは二人でお互いのことを語り合おうか――。

 

☆この小説を書くのにあたって、参考文献など☆

  • 『ケルト神話』がわかる 著:森瀬繚・静川龍宗 ソフトバンク文庫
  • 幻想世界11カ国語ネーミング辞典 著:ネーミング研究会 笠倉出版者
  • 伝説の『武器・防具』がよくわかる本 著:佐藤俊之 PHP文庫
  • ゲームシナリオのためのファンタジー事典 著:山北篤 ソフトバンククリエイティブ文庫
  • 「完璧版」宝石の写真図鑑 著:砂川一郎・キャリーホール 日本ヴォーグ社

ねつ【熱】 by広辞苑

  • あついこと。あつさ。
  • 熱エネルギー参照。                         ←イラストこれ。
  • 物をあたため、また、焼く力。
  • 体温。また病気などで平常より体温が高まること。
  • 物事に心を集中すること。一つのことにうちこむこと。夢中になること。 ←小説これ。
  • しつこいこと。執念深いこと。                    ←小説これ。

何かの出会いのきっかけになったら幸いです!
ここまで読んで下さい本当にありがとうございました!!

 

2011/11/3 彩真 創
オンライン文化祭2012-熱-参加作品

 
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