ある日の昼下がり。
少しの小競り合いがあった。
むーむー
むーむー
ふむ。
言い合って空しくなるな。
こんな狭い部屋で喧嘩は悲しい。
あ〜、なんか楽しいことはないのか……。
おぉ、飛行機雲だ!
あの長ーいシルエット。おいしそうだ……。
おなかが空いてきたな〜〜。
むーむー
なんだ。
まだ、何かあるのか。
もう、やめよう。
つまらないから。
「バンブ〜〜〜〜〜!!!」
笹ーー!
痛い!!
なぜ殴るのだ!
殴ることはないではないかっ。
え?
お前が始めた喧嘩だって?
そうだったか?
もういいではないか。
過去を引きずると、いい大人になれないぞ。
「チシャーッッッッッ!」
ネコォォォォォォォォォ!!!!
お、お、おぬ、御主、いま、全力で殴ったなっ。
もう許さんっ。
俺のこの笹を食べるためだけに特化した、聖なる拳でねじ伏せてやる!
ただいま、醜い争い中……。
「お〜い。アンアン、トウトウ。大好きな笹だよ〜」
邪魔するでない、捕食者よ。
どうせ、俺たちをこってり太らせておいしい脂をその舌で堪能するつもりなのだろう。
見ろ、こいつなんて、最初の可憐さのカケラのカ、の、字もない。
このぷっくり感。
知っておるか?
この前、タイヤにすっぽりはまって抜けなくなった惨めなこいつを、可愛いと笑っている捕食者がいたのだぞ。
「キーーーーーッッッッ!!!!!!!!」
鍵〜〜〜〜〜〜っ!!!!
み、見事なストレート。図星な所為か、腰が入った良いパンチであったぞ。
「ははは。いつみても、仲良しだなぁ。アンアンとトウトウは」
捕食者は笹を差し出しながらアンアンをなでる。
仲良しなものかっ。
気づかないお前は幸せ者だ。
アンアンはお前に恋をしているのだぞ。
見ろ、あの紅く染まった頬。まるで酔った醜い捕食者のようなのだぞ。
そしてすり寄せるあのおでこっ。とげとげのタワシみたいだ。
あんなにアピールしていて、全く無視できるお前を尊敬するぞ。
こいつは捕食者であるお前など、逆に捕って喰うほどの肉食獣だからな。
気をつけるのだっ。
「ユーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!」
俺もかっっっっ!!!!!
み、見事なアッパー。
俺は華々しく散ろうぞ…………。
あとは、まか、せ……た…………。
「トウトウ? どうしたんだい? 食あたりかい? だめだぞ、よく噛んで食べないと……。胃が消化できないよ〜〜」
お前は、食以外の会話はないのか……捕食者よ。
あぁ、今日も穏やかな時が過ぎていくんだなぁ〜〜〜〜。
そう、蒼い空がぼやいて通り過ぎた。
チャン、チャンッ。
了
2012/8/12 彩真 創
ーー天狼の涙雲は朧となるーー
に先に掲載、後にこちらに移行。