初っ端から銀行強盗事件

第三章 〜IN 噴水前〜  二節


 苑は窓際にいた。
 カーテンが開いている窓の向こうには、色鮮やかな花壇が見える。キリトの執事が定期的に手入れしているのを、苑はいつもここから見ていた。
 たまに、皓彗が水やりなどをしており、それを見るのがなにより苑は好きなのだ。
 周りの水滴がキラキラと輝き、彼の姿を照らしているから……。
 苑が家からでたくなかったら無理強いしない。
 なにも聞いてこない。だけど、いつも気にかけてくれる。
 それが、彼女にとって何よりも嬉しかった。
 苑にもわからないから。
 人と違うのはわかる。けれど何が違うのか、彼女にはまったくわからなかった。

 今は誰もいない小さな庭。
 しかし、風もないのに窓が、かたかたと動く。苑はその窓に向かって何かつぶやく。
 大きなウサギの人形をギュッと握りしめ、窓際に寄り添うように、座り込む。
「……お…がい……」
 カタッ
 ひときわ大きく、窓が音を立てる。
 後に静寂が続く。
 苑は、暗い部屋の隅で、人形を強く握りしめた。

 

 

 
第三章 〜IN 噴水前〜 二節に続く
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