〜プロローグ〜

 人里からかなり離れた暗き森。昼でも夜でも薄暗い森は人も獣も薄気味悪がり、あまり近づかない場所。
 一度踏み込んでしまったら、もう抜け出す事はかなわぬ土地といわれていた。

 そこに真夜中、大きな黒い物体がとてつもない速さで駆けていく。
  ――……クイ、…憎イ。……ス…殺スッ……目ニ映ル者スベテヲ!
 その姿はひどく歪(いびつ)で、奇怪な醜い化け物だった。
 キィー、と化け物は声をあげ、人里目指し駆けていく。
 しかし、その化け物は人里へ向かう事はなかった。
 化け物は、かすかな声を聞いたのだった。とても小さいが、凛とした美しい調べを……。

 

 
第一章へ続く……
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