死地の死地たる願い

死地が穴を掘る

何故(なにゆえ)穴を掘るのか

問うてみた

「死地を無くしたいからでございます」

そうか

それは
大層な

「死地は死地ゆえ、何も無いのございます」
「だから掘っては埋めとうございます」

死地は休めず掘ってゆく

何も無いからよいのではないか
そうぼそりとつぶやいてみる

何も考えずとも
誰とも会わずとも
何に感じずとも
なにかを慈しまずとも
誰かに疎まれずとも
なにかを壊さずとも
よいのだから

おしいものだ

「死地は恋しいのでございます」
「死地は寂しいのでございます」
「死地はもう独りはいやなのでございます」

死地に身と体があったなら
泣いているのだろうよ

汚泥の土塊
死地

「あなた様だってもう死地になっていく……」

そうだな
あとは朽ち果てるだけだ

醜い我(われ)に相応しい

変わってくれないか?

我は独りを好む
我は悲しまぬ
我は恋しく思わぬ

ふむ

どうやら無理なようだ

死地は死地として
寂しかろうが
嫌おうが
恋しかろうが

変わることはできないようだ

しかし
そう落ち込むことは無い

いつかは
全てが
死地に
なっていくのだから

そして
死地が
死地でなくなる

それでよいではないか

では
さらば

 

 

 

「最後は……いやなのでございます」
「死地が最後に残るのだけは…………」

 

 

「どうか」
「だれか」

 

 

「死地に『生』をお与え下さい」

 

 

最後に残るのは嫌だ?
叶うはずのない願いを、望むのは
虚しいことなのか
死地が悲しまない方法はあるのだろうか?
現実であろうと空想であろうと……
2011/10/06

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