「……さて、残るはたよみん、いや、鷹小木(たかさぎ) 南子(なこ)。君はどうするかい？ 仲間の後を追う？ 追わない？」
美百合の魂を抜き取りながら、一部始終を呆然と見ていた彼女に問いかける。
鎌から滴る赤い雫を振り払い、切っ先を彼女へと向ける。
「どうするか、は自由だ。俺はその答えによって動くだけだ」
「…………し、死神は簡単に、ひ、人を、殺せるの？」
「そうだね」
規律で、リストにないものを殺すなって決めてあるけど、実際、リストに上がっている者だけが死ぬ訳ではない。
予測が困難。
バレたら、体罰行きだけど、当事者が黙っていれば、ばれることはない。
実際、俺の行動バレてないしね。
「質問は以上？ 早くしないとガス爆発起きて結局君も、お陀仏になるよ」
「！ あ、あなたは、あなたも危ないんじゃないの！？」
「まさか、一緒にしないでよ。体のデキが違うよ」
俺の皮膚はそこそこの銃でも穴があかないよ。
死神と言われる一族でも、エルのように体が人間に近い者と、完全に異なる者がいる。
俺は後者。
『――それでも僕らは同じ存在(いきもの)だ』
あいつはそう言っていたけど、そしたら、これは食物連鎖に当てはまるってことかな。
より強い者が三角の頂点に立つ。
ま、今はそんなことどうでもいいか。
もう少し意地悪してみることにした。
「ちなみにトイテ、あぁ、古屋梛(こやなぎ) ナツはもう、この世にはいないよ。さて、どうする？」
「！？」
どうしてって顔に書いてある。
よく見なくても、彼に気があるのなんて誰だってわかるよ。たよみんは素直だからね。
受け入れがたい事実に彼女は困惑しているようだけど、時間がないから、催促するよ。
「さぁ……答えは？」
「……」
「生きる……」
魂より強い光を宿した目で、僕を見返しながら告げる。
「……私は、生きる、生きたい………………！」
エルと似たような瞳。
俺には到底たどり着かない憶いの秘めた決意。
それは、生きると選択した奴らが得た、悲しみと決別、勇気と希望。
ねぇ、エル……。
「それは、寂しいことじゃないのかい？」
「そ、そんなの、生き続けてみなきゃわからないじゃないっ」
『この先のことなんて誰にもわからない、俺もお前も……』
確かに。
わからないねぇ。
君と似たような回答が聴ける日が来ることなんて。
充分かな。
「わかった。出口はあちらだ」
「え……あっ」
鎌を左右に一振り、ライトの漏れる方へ、彼女を放り投げる。
「さて、アフターサービスでもやろうか」
便利な鎌で、手短に生きている奴らを掘り出し、出口に放り投げる。
俺のちょっとした気まぐれ。
「最後の仕上げっと」
フードを目深にかぶり、俺はガソリンタンクへと、腕を振り下ろした。