リーダーの無線に何か合図がくる。一言二言話した後、彼はナイフを持った人物にアイコンタクトをした。
――いやな合図だ。
獅童の予感は当たった。ナイフを持った男が彼の隣にいる漠の方へとやってきて、
「そこの女、来い」
「え……?」
一瞬の沈黙と二つの絶句。
「だから、おとなしくついてこい」
「いえ、その前の言葉を、もう一度……言って下さいますか?」
ひどく嬉しそうに、斜め上目線で言われた男は、少したじろぐが、磨き上げられたサバイバルナイフを突きつけて素直に繰り返す。
「女、いいから、こいっ」
「はい!」
確かに、今の漠はいつもの青い眼鏡をではなく、コンタクトで軽めに化粧をしている。
獅童達は見慣れているが、他人からだと、どちらかというと女に見えるのかもしれない。
女と間違えられ、とても嬉しそうに人質になった漠に、獅童はまぁ、あいつなら大丈夫かと、見届ける。
潤一郎に関しては、驚きと恐怖のあまりあんぐり口を開けて固まっていた。
*** ***
店内にお金がほとんど黒の鞄に収まりきっていくのを見て、リーダー格の人物がここの責任者は誰だ、と店員達に問いかける。
すると、その答えかのようにまだ若い男性にみんなの視線が注がれた。どうやら彼がここの責任者らしい。
パリっとした上等なスーツを着て、普段なら愛想を浮かべそうなその顔には、今は恐怖の色しか見えなかった。
「金庫を開けろ。そこにあるアタッシュケースを全部渡せ」
「な、な、なぜ…………」
そのことを……そういった表情で、若い男は狼狽えているが、リーダーは早くしろと言わんばかりに、漠の額に銃口を押しつけ怒鳴る。
「いいから、いう事を聞け!! でないと、こいつを撃ち殺すぞ!!」
人質がいたら、もうなす術がない。
その人質はというと、か弱い女の子の振りをしていた。
振りを…………。
なるほど、確かに女性の嘘は、漠ならわかるだろうな。そう変に納得した皓彗。
そこで納得するのもどうかと思うが。
責任者はビクビクしながら、ナイフを持った男に連れられて、金庫室へと向かっていった。
――狙いはアタッシュケースか。
なんとなくだが全貌が掴めてきた獅童。支店であり、他の銀行に比べても大きいとはいい難いこの銀行に、こんな綿密に計画をたてて、襲撃した理由がようやくわかった。
無線で店員の側にいる男が何かを話し、リーダーに手で合図を送る。
すると、リーダーは漠をそいつに押しつけ客の方へと向き直る。
「お前らはこの袋に金品を入れろ!」
そう命令してきた。
なんとも、強欲な強盗団だ。
犯人はおそらく七人はいる。獅童は確信した。実行班四人。手引きをした者二人。そして、逃走の手だてをしている仲間が最低一人。
この計画の指揮官はこの状況を一番見やすい位置として一番可能性のある、管理室にいるだろう。
おおよその概要がわかったが、ことをおこすタイミングがない。このまま犯人達が去るのを黙ってみるしかないな、と皓彗は判断した時、そのタイミングがきたのだった。