「頭に入ったか?」
「あ、あぁ……」
一通り伝えるべきことを話し終えた獅童。しかし、潤一郎はそれを聞いている途中から、表情がだんだん難しい顔になっていった。
どうしてそんな顔をしているのかと訊こうとした時に、何も知らない、もう一人の仲間が帰ってきた。
手には黒のアタッシュケースを持って。
「な、なんだ! これは」
今まで金庫に入っていたのだろう。音が聞こえなかったため、外の事はわかっていなかったようだ。連絡を取ろうにも仲間たちから返事がないので、様子を見に来たのかもしれない。
そんな可哀相な男に、飛来物が。
潤が常に持ち歩いている木刀セットが、鋭い勢いで男の顔に命中する。
投げた本人はひどく興奮していた。
よほど親友を撃たれた事と獅童の語られた内容に、非暴力主義者の彼でも激怒したのだろう。先ほどからの難しい表情は怒りの表情だったのだ。
「ナイスっ。潤!」
すぐさま、漠がカウンターをひらりと降り、走る威力に任せながら、全身に回転を加えた蹴りをふらついている男の鳩尾に命中させる。
「がはっ」
まともにくらった男は、うめき声を上げて数メートル吹き飛ばされた後、動かなくなった。
その光景をまばらに見ながら、獅童は意識をそこで手放したのだった――――。