――どうして……?
――どうして僕は、産まれたのかな?
倉の中央で倒れている少年を、取り囲んでいるのは大人達。
「さぁ、飲むんだ!」
口々に叫ぶ。
しかし、少年は絶対に口を開かなかった。
無理矢理開こうとすると、暴れ、逃げ、捕まえての繰り返し。
この数週間、そんな押し問答が続いていた。
「エルベリト。なぜなんじゃ……」
輪の中で一番年老いた者が、中央の少年、エルベリトに問いた。
しかし彼は祖父にあたる、長老の問いでさえ答えない。
ただ、心の中で呟いた。
――これは、食べ物じゃない、と……。
そんな数百年前のお話。